森村誠一氏死去

森村誠一氏が亡くなった。

やはり森村誠一氏の執筆活動の中で大きな転換点になったのは「悪魔の飽食事件」なのだろう。これについては亡くなった後タグをつけていろいろと書かれている方もいるようだ。小生はむしろ、あのような事件がなぜ起こったのか、そのことについての背景は森村氏自身が書かれているし、持ち込んだ当人も記者会見したとのことなので、それはそれなのだが、まさに今でもそのようなタグをつける方がいるということにこの問題の難しさ、日本の国民を分断するような動きがあるのだと思う。地味な書き手としては学者の常石敬一氏がいる。731部隊について、森村氏の写真の誤用を理由に”なかったこと”にしたい方は、ぜひ、常石氏の著作をご覧いただければと思う。写真などは載っていないので冷静に読めるだろう。

digital.asahi.comもちろん写真はインパクトがあるだけに、誤用は許されるものではない。しかし、今はそれを訂正した版もでているのであり、森村氏は、常石氏の著作では得られなかった、広い範囲の国民に知らせた。しかしそうすると、反動も起きるということなのだろう。

その後の森村氏の作風はどこか社会派に傾いていったような気がする。もちろん初期のカッパノベルスの作品群から出版社が変わったこともあるのかもしれないが。しかし、松本清張氏のような感じとも大きく違う、森村氏ならではの社会派的な作品群が生み出されていたと思う。このことは、カッパノベルス時代から角川書店に移り、角川春樹氏との関係もあるのかもしれないが、それは角川氏の自伝に何か書いてあったか確かめてみたいところだ。

朝日新聞赤川次郎氏による追悼文を読むと、カメラへのこだわりやコーヒーの飲み方へのこだわりも書いてあり、かなり細かいことにこだわる方であったことがうかがわれる。そのことは悪魔の飽食事件以降さらに強化されたのではないだろうか。最近は老人性うつからの経緯を書かれた本の出版もされていた。復活されて新しい作品が生み出されることと思っていたが残念であった。