読書感想文 今を生きる思想 宇沢弘文 新たなる資本主義の道を求めて(佐々木実著)

今を生きる思想 宇沢弘文 新たなる資本主義の道を求めて (講談社現代新書) | 佐々木 実, 宇沢 弘文 |本 | 通販 | Amazon

一気に読んでしまった。

佐々木氏の前著と重なるところもあるが、しかし、老人は忘れているので、気にならない。

当然岸田首相がいっている新たな資本主義とは全く違うことです。

例えば小島某が書くような個人的な感傷はなく、きわめてドライに書かれている。それだけに宇沢氏の思想の歩みが伝わり、彼が考えていた資本主義というものが小さい本で十分とはいえないまでも伝わり、数々の宇沢氏の”日本語の”本に興味がわいてくる。

その、いわば導入のような本だと思う。

私自身昔自動車の社会的費用を読んで、経済学というものの分析の鋭さに驚いた。そして、私たちが何か不合理に感じることは、それなりの裏付けがあることもわかった。もちろん主流の経済学者は車は”いいもの”で日本を豊かにするものと考えていただろう。しかし、庶民からすると、公害の問題や事故の問題など山積みだった。また、さらにいうと、車の普及で山の斜面に作られたような住宅地を買った人たちも老齢になり、車を運転できなくなると、とたんに生活に不自由になる。そういった場所は、車の利用者が多くてバスもあまり走らなかったから、いまから公共交通を整備するのも難しい、という感じかと思う。そういったことまではさすがに70年代には見通せなかったと思うが。

ところで改めて思うのは実は私は宇沢氏の著作で若い時に岩波書店の”価格理論II”という教科書でも触れ合った。1971年発刊なので自動車の社会的費用より古い本だ。この教科書での宇沢さんが書いているのはもしかしたら、自動車の社会的費用のあとの特に三里塚にかかわられていた後の宇沢さんからするとちょっと意外なのかもしれない。佐々木さんの本に書かれている、米国での宇沢さんの伝えられ方は、このあたりの事情もあるのかなあと思わされる。米国にもチョムスキーのようなひとはいるが、そういうものなのか。

ちょっとここでアマルチャ センのことも思い起こす。彼も数学を使う経済学者として、活躍して、そのあと、さまざまな倫理学に近いような分野での活躍が目立った人だが、日本では後半生のほうが有名だと思う。日本では経済学が求められているのはそういうことなのか、、、

とにかく、非常にいい本だと思いました。