NHKThe商社の再放送をみる

先週は録画でためておいたNHKのThe商社をみた。

ちょっとびっくりなのは、このドラマは夏目雅子が出てますが原作にはないのですね。

もちろん実際の安宅栄一は音楽家パトロンでそこまでは原作の小説にもでてくるところだし、ピアニストを海外に留学させたところも事実としてあったようなので、あながち人物の造形としては間違えているというわけではないですが、ただ、ここまで持ってきたのには驚きました。もし原作のままだとちょっと退屈なドラマ(ドラマにならないかも)だったところをこういった女性を何人か配することで深みが出たように思います。ただメインはやはり、サッシンだまされた上杉の話。ただし、この話は原作では丁寧に会社としてやられているところを書いていますが、ちょっとドラマはデフォルメしすぎという気もしました。

原作にははっきり書いてありますが、サッシンが「江坂からはカンバイチャンスの製油所を誰も見に来ない」というセリフは商社という特質を結構表しているのではないかと思いました。商社が考えるのは結局ものを動かして金利の差などで利益を生んだり口銭を稼ぐこと、という気がします。それは今でも実はあまり変わらないのではという気も。もちろん日本という資源がない国ではそれも大切ではありますが。最初に上杉がサッシンに会うところで、総合商社について説明しますが、このあたりは実は面白いところで、こういういろいろなところに手を広げて口銭だけ稼ぐようなやりかたが国際的にどうみられるかを表しているように思いました。もちろん総合商社といってもそれぞれの部署が担当するモノは違っていて、それに合わせた商売をそれぞれの部署は行っているということなのでしょうが、ここで描かれているように、資源の輸入が商社にとってはやはり大口でそれは魅力的であったのでしょう。しかし日本の商社には資源の専門家はいたのかな?

もしかするとこのドラマの勝者はひたすら骨董を集めた江坂要蔵ではないかとも思えます。口銭という甘い汁を求めていくよりも実物を集めてストックとして持っている強みのようなことを言いたかったのかもしれません。所詮骨董を見抜くような眼力がないとビジネスも失敗するということかもしれません。

また21世紀の日本で見ると、今は官営工場の払い下げどころではなく、直接税金を使わせることばかりが大企業の経営者にはあるようで、どうもな気がします。

全く関係ないですが、ベトナムでの某社の製油所のプロジェクトが失敗したらしいことなどを聞くと構造としては1970年代と大して変わらないように思えます。

とながながと書いてきましたが、俳優さんたちはすばらしかったですね。ちょっと夏目雅子の演技はどうかと思いましたが、まあそれはそれということで。水沢アキもよかったし、中村玉緒もうまいなあとおもいました。しかし私が一番感動したのは加藤治子です。ちょっとしか出てきませんが完全にドラマを取るくらいの演技だったと思います。(原作には出てこないですが)

最後になりましたが、林光さんが音楽を書いていて、これは当然素晴らしかったと。本当に1970年代から80年代くらいはNHKはお金をかけていい音楽もつけられたんだなあと思います。

また、このドラマのすごいのは、カンバイチャンスの製油所をちゃんととってきていることです(おそらく)。ここまでやるの?と思うほど。でもあれだけのことになった製油所をちゃんととってきてくれたというのはそれだけでも価値があるように思いました。