黒田日銀総裁家計は値上げ許容について

黒田総裁が東大渡辺務教授の調査をもとに家計は値上げを許容しているという発言をしたそうだ。あまり詳しく彼の発言を読んだわけではないが、経済の調査への発言として踏み込みすぎだろう。しかし、もともとの調査自体もある意図を持ってされたとしたら問題は大きい。

この発言のもとになったのは、調査は「なじみの店でなじみの商品の値段が10%上がったときにどうするか」との内容だった。昨年8月は半数以上が「他店に移る」と答えたが、今年4月は半数以上が「値上げを受け入れ、その店でそのまま買う」と答えていた。」(読売新聞から)ということらしい。この調査自体もわけのわからいところがある。ほかの店で買うのはおそらくその商品がほかの店では同じ価格で売っているということだろう。しかし、例えば今のパンのように、大手が全部上げていればほかの店にいっても同じなので、その店で買うだろうし、いまのように、ニュースでメーカーの値上げを知っていれば、実際には違ってもそうするひとも多いだろう。つまり大きい要素は、日々のテレビでの”刷り込み”なのではないだろうか。もしかするとスーパーのチラシをみて、きちんとほかの店の価格も10%上がった状態を見ているからだけかもしれない。そういった観点があったのかはこちらをみるとどうも怪しい。

https://www.centralbank.e.u-tokyo.ac.jp/wp-content/uploads/2022/05/household_survey_May_2022.pdf

これが抜粋なのかはわからないが、問題の設問で、回答に、”他の店と比較して上がってなければそちらに行く”という当然あるべき質問がない。設問の中に”その商品をその店で買
うのをやめる。その商品を値上げせずに売っている別な店を探す。”というものがあるが、そもそも今であれば最初からそちらにいくだろうから、おそらくこの設問は微妙だが、ある店に行ってみてから別の店に行く、という意味だととらえられているのではないか。また、どれかを選ぶ形式のアンケートではなく、それぞれの行動に当てはまるかどうかを選ぶ形式であることにも注意が必要だ(6月10日追記)。
こんな調査が天下の東大教授の指導の下に行われて政策を決める人たちが結果を利用しているとしたら、どうなんだろうと思わざるを得ず。暗い気持ちになった。朝日新聞で渡辺氏が一番多かった回答は、その店で買い続けるが料や頻度を減らして節約するだった、と言っているが、変化ないが50%超、渡辺氏がいっている最多が60%超であるので、黒田氏の発言はこのアンケートから導いたものとしてそれほど私には違和感はなかった。このアンケートの結果として黒田氏の利用の仕方は正しく、むしろアンケート自体がある方向にとるような方式であったといったほうがいいと思う(6月10日追記)

家計の値上げをについてヒステリックに騒ぎ立てる野党もどうかと思う。むしろこういういい加減な調査が東大の名のもとに行われて、それが政策決定者に提供されている構造こそ批判されるべきではないか。

黒田さんという人はカール・ポパーの翻訳などもされている知性のひとという評判だったが、なんだかなあとしか思わざるを得ませんですね。